絞りの着物
着物の中でも、特に贅沢なものが、絞りの着物である。
遠目に見るとふっくらした優しさが、近くで見ると規則正しく並ぶ小さな粒や精巧に柄を作り上げるその粒に、技術の高さが感じられる。
総絞りともなると、着物一反分でおよそ15万個もの絞りの粒があるそうだ。
着物の生地の幅は約38cmだが、絞りを施された染織前の生地の幅は15cmもないほどまで狭くなる。
それを一反分というと、およそ13メートル。
どれだけの時間をかけての作業なのであろう。
絞りが贅沢な品であることは、認めざるを得ない。
奈良の正倉院には、絞りの原型のようなものを施した布が残っているそうだが、豪華なものとして普及したのは、江戸時代になってからである。
その当時は、贅沢禁止令の標的だったそうだ。
現在では、女性が着物を身に付けるのは、成人式や結婚披露宴などのイベントに限定されるだろう。
普段着としては、いささか機能的に問題があるようだし、着物自体は素晴らしくとも、季節によっては着られないこともあるはず。
恐らく着物は、女性が代々受け継いでいくものという認識があるのかもしれない。
母が着た着物を娘が着る。
その娘に子どもが誕生し、成長してから受け継いだ着物を着る。
これほどの長い年月、保管方法さえ間違わなければ、ほとんど問題無いというところが品質を確かなものとしている。
着物のリペアも貴重な技術であり、どこで可能なのかを知っておいて損は無い。